寝ている間に子供がおねしょもしくは無意識に排尿する ことはよくみられることです。おねしょ、すなわち夜尿症 は腎臓の病気や子供の怠惰、行儀が悪いからおこるわけで はありません。多くの場合、子供が成長するにつれ、無治 療で経過を見ます。しかしながら、子供や両親にとっては 不都合で恥ずかしいことなので心配します。
子供の何パーセントがおねしょをし、通常は何歳でおねし ょをしなくなるのでしょうか?
おねしょは特に 6 歳未満ではよくみられます。5 歳では約 15~20%の子供にみられます。年齢が上がるにつれ、おね しょは減っていきます。10歳では約5%、15歳ではほんの 2%、大人では1%未満です。
どういう子供がおねしょをしやすいのでしょうか?
- 親も幼少期に同じようなおねしょの問題をかかえてい た子供。
- 正常な神経発達が遅れ、膀胱緊満感の感度が落ちてい る子供。
- 熟睡している子供。
- 女の子より男の子に多い。
- 心理的・身体的ストレスが原因ではじまったり、増え たりする。
- 割合は少ないが(2~3%)、尿路感染症、糖尿病、腎機 能障害、蟯虫、便秘、膀胱が小さい、脊髄の異常や尿道 弁がないといったような医学的な問題が原因となる。
膀胱尿管逆流症における定期観察は、高血圧、成長、尿路感 染症の再発、腎機能障害を評価するために勧められる
おねしょをする子供に、いつ、どんな検査が行われている のでしょうか?
医学的もしくは構造的な問題によっておねしょをしてい ると考えられたときに、そういう子供だけ集められ、検査 をされます。もっともよく行われている検査は尿検査、血 糖値、脊椎X線、腎臓や膀胱の超音波検査や他の画像検査 です。
治療
おねしょは完全に無意識に起こるもので、故意ではないの で、子供を叱ったり、罰したり、たたくべきではありませ ん。非難するよりも、おねしょは時間とともになくなり、 治るものだと子供に自信を与えるべきです。おねしょに対 する最初の治療は、教育や動機づけ、水分摂取量や排尿の 習慣を変えることです。もし、それらの手段で改善がなけ れば、夜尿アラームや薬物を試してみましょう。
膀胱尿路逆流症は尿路感染症を患う小児に非常に多く、 高血圧や慢性腎臓病のリスクとなる
1 教育や動機づけ
- 子供はおねしょについて十分に教育されるべきである。
- おねしょは子供のあやまちではないので、 怒ったり、 叱 るべきではない。 怒ったり、 叱ったりすると状況は悪く なるであろう。
- おねしょが原因で子供をからかわないように注意する。
- おねしょによってこうむる子供のストレスを減らし、 子 供が家族と一緒に乗り越えるよう手助けし、 問題は一時 的なもので確実に治ると安心させることが重要である。
- おむつのかわりにしつけ用のパンツを使用する。
- もし、 子供がおねしょが原因で目が覚めたときは、 ベッ ドリネンや汚れた洋服を変えることができるように、 近 くに余分にパジャマやベッドシーツ、 タオルを用意して おく。
- マットレスへの被害を避けるために、 マットレスにビニ ールをかける。
- 尿を吸い込むようにベッドシーツの下に大きいタオル を引く。
- 尿のにおいがしないように、毎朝の入浴を促す。
- 夜におねしょをしなかったときは褒めて、ご褒美を与 える。小さなプレゼントでさえ、子供を勇気づける。
- 便秘は、ほおっておくべきではなく、治療すべきであ る。
膀胱尿管逆流症における定期観察は、高血圧、成長、尿路感 染症の再発、腎機能障害を評価するために勧められる
2. 水分摂取量を制限する
- 寝る2~3時間前に子供が飲む水分の量を制限する。
- 夕方にカフェイン(紅茶やコーヒー)や炭酸飲料(コ ーラ)やチョコレートを避ける。これらは、排尿量を 増加させ、おねしょを悪化させるからである。
3. 排尿習慣に対するアドバイス
- ベッドに入る前2回の排尿を促す。 1回目の排尿はベッ ドに入る決まった時間に、 2回目の排尿はちょうど眠り につく前に。
- 1日を通して、 規則正しい間隔でトイレを使用すること を習慣づける。
- 排尿させるために、毎晩眠りについたあと約 3 時間後 に子供を起こす。もし必要ならば目覚ましを使用する。
- おねしょをもっともするであろう時間を決めることに よって、起きる時間を調整する。
4.夜尿アラーム
- 夜尿アラームは、おねしょをコントロールするのに最 も効果的な方法で、一般的に 7 歳以上の子供に使用さ れる。
- センサーを子供のパンツにとりつける。子供がベッド の中で排尿したとき、その装置が尿を感知して、アラ ームがなり、子供を起こす。起こされた子供はトイレ に行くまで尿をコントロールできるようになる。
- アラームは、おねしょをする直前に子供が起きること ができるように訓練するのに有用である。
膀胱尿路逆流症は尿路感染症を患う小児に非常に多く、 高血圧や慢性腎臓病のリスクとなる
5 膀胱訓練
- おねしょをする子の多くは膀胱が小さい。膀胱トレー ニングの目標は膀胱容量を増やすことである。
- 日中の間、多量の飲水を勧め、尿意を感じてから排尿 まで我慢させる。
- 練習するにつれ、子供はより長く尿をためることがで きるようになる。このことは膀胱の筋肉を強化し、膀 胱容量を増やすであろう。
6 薬物療法
薬物はおねしょを止めるための最終手段として使用され、 一般的に7歳以上の子供にのみ使用されます。効果はある が、おねしょは完全には治りません。薬物は対処療法で、 一時的に使用されるのがよいでしょう。薬物をやめたとき に、たいてい、おねしょは繰り返されます。根治療法は薬 物より夜尿アラームでしょう。
膀胱尿管逆流症における定期観察は、高血圧、成長、尿路感 染症の再発、腎機能障害を評価するために勧められる
A 酢酸デスモプレシン(DDAVP)
他の方法でうまくいかなかったときに処方されます。この
薬は夜間の尿量を減らします。この薬は尿量が多い子供に
のみ有用です。この薬を使用している間は、水中毒を避け
るために、夕方の水分摂取量を減らすことを忘れないよう
にしましょう。この薬はたいてい就寝前に投与されます。
多量の水を飲んだ時は、いかなる理由でもこの薬を使用す
るのは避けるべきです。この薬はとても効果的で副作用も
ほとんどありませんが、費用がかかるため、多くの親は金
銭的負担が困難です。
B イミプラミン
イミプラミン(三環系抗うつ薬)は膀胱に対して弛緩作用
があり、また括約筋をしめることによって、尿をため膀胱
の容量を増やします。この薬はたいてい、約 3~6 か月間
使用されます。効果が早いので、就寝1時間前に内服しま
す。この薬は非常に効果的ですが、副作用がしばしば認め
られるため、症例を選んで使用する必要があります。
C オキシブチニン
オキシブチニン(抗コリン薬)は日中のおねしょに対して
効果があります。この薬は膀胱の収縮を減らし、膀胱容量
を増やします。副作用は口渇、顔面紅潮、便秘などがあり
ます。
おねしょの問題を抱える子どもを持つ家族はいつ医師に
相談すべきでしょうか?
おねしょをする子どもの家族は以下のような時に直ちに
医師に相談すべきでしょう。
- 日中のおねしょ
- 7、8歳以降にもおねしょが治らない場合
- おねしょがない期間が最低 6 ヶ月は続いた後のおねし
ょの再発
- 便失禁があるとき
- 発熱、痛み、排尿時灼熱痛および頻尿、異常な口渇、
および顔面、下肢のむくみがある時
- 尿線が細く排尿困難があるとき